目を開けたら、光の中にいた。
あれ、ここどこだ?
何だ、ここは一体どこだ。
寝ぼけてるのかな、それとも今までのが夢だったのかな。
夢なのか、それとも今までのが幻だったのか。
ってうわあ!何だよ目の前にいたのかよ、気付かなかったじゃんか。
っ!うるさい声を出すな、こっちだって驚いてるんだ。
近すぎて見えなかったんだな、何だか面白いな。
逆だろう。今まで遠すぎて見えなかったんだ。
どっちだっていいよ。今見えてるんだから。
ふん、相変わらず呑気だな。
なあ、実は俺、今まですごく長い夢を見ていたみたいなんだ。
俺もだが、何故曖昧なんだ。
だって目が覚めた今でも夢だなんて思えないんだ。
確かに、今まで見たどんな夢よりもはっきりと頭に残っている。
でもきっと消えちゃうんだろうな。
そうだろうな。
(ひどく温かかったのに)
(冷え切った心に火傷を負いそうなほどに)
(すごく優しかったのに)
(優しさに慣れぬ体の軋む音が聞こえるほどに)
ああでも俺、今幸せかもしんない。
こんな何も無い光の中にいてもか。
だって目の前にお前がいるだろう?
だがそれだけだ。
それだけでいいんだよ。
お前はそれだけでいいのか。
それ以外に何がいるっていうんだよ。
俺達は俺達以外には何も持っていない。
だから俺達は俺達だけでいいんだ。
そうか。
そうだよ。
……そうか。
ああどうしよう、俺今すごく眠い。
眠ればいいだろう。
でも今目を瞑れば、俺は1人になってしまう。
馬鹿が。お前の目の前にいる存在をもう忘れたか。
え、一緒にいてくれんの?
俺たちは俺たち以外に無いと言ったのはどこのどいつだ。
えーでも。
言い方を変えようか。俺達には、俺達以外はいらない。
いいのか?
言ったのはお前だ。
お前もだろ。
うるさい、さっさと寝ろ。
うん実はもう限界。でも寝るのもったいないだろ。
何がもったいないというんだ。
だってまだ話していない事がたくさん、たっくさんあるんだ。
起きた後に聞いてやる。
本当か?
ああ。
そっか、それならいいや。お前も寝る?
正直、今にも瞼が落ちそうだ。
それならよかった。じゃあ今度こそ夢の中で会おう。
もう縮むなよ。
こっちの台詞だっつーの。
子守はこりごりだからな。
またまたー、実は可愛がってたんだろ。
はっ、言ってろ。
俺はもう一度会ってもいいよ。
……ふん。
何だろう、すごく温かい。
周りを囲む光のせいか。
きっと俺とお前がいるからだ。
そうか、そうかもしれないな。
すごく眠いな。
ああ。
今度こそ会おうな。
ああ。
約束だからな。
約束だ。
おやすみアッシュ。
おやすみルーク。
光の中、幸せそうに眠る我が力を受け継ぐ者たちよ。
お前達がどこへ飛び、誰を救ってきたのか、それは私にも分からぬ。
だがその者たちの行く末はきっと、お前達が夢に見たような優しいものになるのだろう。
私には分からぬ。何故なら、私の敷いたレールから未来を外れさせたのはお前達だからだ。
我が子とも言える同位体に喧嘩を売られる日がこようとは思わなかった。
疲れただろう。今はただ眠れ。
次に目を開けるとき、そこに互いが映る事を願いながら。
預言から外れた新しい世界に降り立つだろうお前達に、幸福があらんことを。
親愛なる
我が子たちへ
最愛なる
06/08/30
あとがき
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