2、北に違いない
アッシュは箒の柄を北へと向けて箒を飛ばした。滑るように空中を移動する箒アルビオール号は主を振り落とす事無く順調に北へと飛んでいく。
「なあアッシュ、何で北なんだ?」
「何となくだ」
肩にしがみつくルークの問いに答えながら(時々ルークの頭の上に生えているのかつけているのか分からないトナカイの角が頬に当たって痛かったが肩から振り落とそうとは何故か思わなかった)アッシュはまっすぐ北を目指す。しかしそこへ横から思わぬ声がかけられた。
「アッシュ!何をしているのです!確かに雪だるまだから北にいそうだと思いがちですが相手は敵ですのよ!裏をかいて南にいるに決まっているではありませんか!」
「ぐはっ?!な、ナタリア?!」
急に横から激突してきた犯人はナタリアだった。真っ赤で大きなリボンを頭の上につけ、ワンピースはアッシュと同じようにサンタカラーに染まっている。確かナタリアは魔法使い仲間だったな、と衝撃にグラグラ揺れながら思い出していれば、箒の上に仁王立ちになったナタリアがアッシュの頭を掴んで安定させてくれた。
「まあ、殿方がこれぐらいでバランスを崩すなんて、情けないですわ。もっと鍛えなければなりませんわよアッシュ」
「ナタリア……その前に箒で特攻しないでくれ……」
「ところでナタリアはユキダルマンの居場所を知ってるのか?」
何気にナタリアがアッシュに突っ込む前に肩から避難していたルークがふわふわ漂いながら尋ねる。ナタリアは口元に手を当てて、自信満々に笑った。
「もちろんです!正義の魔法使いには敵の居場所がバッチリ丸分かりなのですわ」
「すげえ!どっちにいるんだ?」
「あっちですわ」
ピッとナタリアが指差したのは、南の方角だった。確かにナタリアの言い分にも一理あるような気がする。自分の勘かナタリアの言葉か、どちらかを信じなければならない。ようやく衝撃が消え去った頭でアッシュは悩んだ。
1、自分の勘を信じる。
2、ナタリアの言葉を信じる。