2、ナタリアの言葉を信じる。
「まあ、わたくしを信じてくださるのですね、ありがとうアッシュ!」
「ああ」
大して自分の勘に自信があった訳でもこだわりがあった訳でもないし、とアッシュはナタリアを信じることにした。ここで頷いておかねば何だか怖い事になりそうだ、という予感は辛うじて喉の奥へと飲み込む。
「あなたならきっとユキダルマンを打ち倒し、サンタクロースを助け出す事が出来ると信じておりますわ。頑張って下さいまし、アッシュ」
アッシュの手を労わるように握ってエールを送り、隣のルークの頭を軽く撫でてから、ナタリアはにこやかに手を振って去っていった。
「……確かナタリアも正義の魔法使いを名乗っていたな。なのにどうして一緒に」
「さあっアッシュ!ナタリアも納得してくれたことだし先に行こうぜ!」
アッシュの呟きを無理矢理打ち消すように元気よくルークが声を上げた。何か突っ込んではいけない部分に突っ込みそうになったらしい。仕方なくアッシュはナタリアが指差した方向へと方向転換して箒を走らせた。
しかしその飛行も長くは続かなかった。突然箒アルビオール号がガッタガッタと揺れ始めたのだ。
「な、何だ?!」
「大変だ、アルビオール号が故障しちゃったみたいだ!」
不安定にふらふらと宙を浮かぶ箒を見て、アッシュもルークも慌てた。こんな空中から落ちてしまえばアッシュはひとたまりも無いだろう。ルークは何も無くとも宙に浮かべるがアッシュを支えられるほど力も強くないし体の大きさが足りない。何故突然故障というか壊れるんだこの箒はっと心の中で毒づいていると、オロオロしていたルークが何かを見つけたようだった。
「あ!アッシュ見ろよ、あそこにちょうど箒職人の家があるぞ!」
「箒職人だと?」
「アルビオール号を直してくれるかもしれない!」
不自然なぐらい都合の良い展開だが、この緊急事態だ、仕方が無い。アッシュは何とかフラフラな箒を駆使し箒職人とやらの家の前まで辿り着いた。なるほど、家の上にデカデカと「箒職人の家」と書かれた看板が刺さっている。これは分かりやすい。
「……いや、怪しすぎるだろ」
「すいませーん!誰かいませんかー?」
あまりの怪しさにアッシュが呆れている間にルークが勝手にドアをドンドン叩き出してしまった。まあここまで来てしまえばこの箒職人に頼るしかない。地面に足をつけたと同時に、アルビオール号も力尽きたようにパタリと倒れてしまったのだから。
ルークの呼びかけから数秒後、家の中からこちらへと近づいてくる足音が聞こえた。箒職人が留守ではなかったことにひとまず安心して、誰が出てくるのか内心で身構える。
かくして、ドアを開けて出てきた箒職人の正体とは。
1、ギンジだった。
2、ノエルだった。