2、ノエルだった。



「あら、魔法使いさん方、いらっしゃい。何か御用ですか?」
「実は箒が故障しちゃったんだ。あんた直せるか?」


ルークが箒を指差せば、ノエルはアッシュが手に持つ箒アルビオール号を眺めて、困ったように眉を寄せた。


「困りました……箒の修理は兄の専門なんです。私はどちらかと言えば新しく作る方が得意で……」
「じゃあ、直せないのか……」
「あ、でも出来るだけやってみます!ちょっと待ってて下さい!」


少し肩を落としたルークを見てノエルは慌てた様子でバタバタと部屋の中へと入っていった。お人よしな奴だな、と思いながら、アッシュは箒を手に家の中へと入る。部屋の中でアッシュから箒を受け取ったノエルは、慌しくお茶を出した後なにやら悩みながら作業場と思わしき奥の部屋へと引っ込んでいった。


「俺なんか悪い事言ったかな……」
「これであの箒が直ったら儲けものだろう。気にすんじゃねえ」


置かれた自分の分の湯飲みにしがみつきながら眉を寄せるルークの頭を人差し指でぐりぐりしてやってから、アッシュはゆっくりとお茶を飲んだ。それから大して時間が経たない内に、ノエルが二本の箒を抱えて奥から出てくる。


「すいません、やっぱり私には無理そうなので……新しいものを持ってきました」
「新しいもの?」
「はい!お詫びと言ってはなんですが、どちらかお選びください」


わざわざ新しいものを用意してくれたらしい。おそらくノエル自身が作ったものなのだろう。別にアルビオール号にしか乗れない訳では(多分)無いので、ありがたく使わせてもらうことにする。
ノエルが持ってきた箒の一本は、ほとんどアルビオール号と変わらないものだった。


「これは?」
「それはタルタロス号です。ちょっと高く飛ぶのが苦手だけど、スピードが出ますよ」


もう一本は、はっきり言って箒じゃなかった。どこからどう見てもモップだった。


「……これは?」
「それは魔女の○急便を参考にして作った私オリジナルです!ちょっと毛が短くて作るのにとても苦労したんですけど、ちゃんと飛びますよ!扱いはちょっと難しいですけど乗り応えはあります!モップ自体プロに頼んで高級なものを取り寄せた一品です!名付けて「ノエルスペシャル号」です!」


ノエルの瞳が水を得た魚のようにイキイキと光り輝いた。「こっちがおススメです」と目で語っているようなものだ。しかしモップ。ノエルの言う魔女の宅○便とやらをアッシュは知らなかったが、箒のようにちゃんと飛ぶとは思えなかった。しかしノエルの表情は明らかにモップの「ノエルスペシャル号」を選ぶ期待に満ちている。
さて、どうしたものか。



1、タルタロス号を選ぶ。

2、ノエルスペシャル号を選ぶ。