「大変だアッシュ!今日はせっかくのクリスマスイブなのに良い子にプレゼントを配らなきゃならないサンタさんが聖夜の妖怪ユキダルマンに攫われちゃったんだ!正義の魔法使い鮮血のアッシュとして助けにいくぞ!」

「ああ。この展開はこの格好を見た時から大体予想していた」


頭の周りをぐるぐる飛びまわる手の平サイズのトナカイコスプレルークの声を聞きながら、アッシュは死んだ魚のような目で目の前の鏡を見つめていた。そこに立っていたのは、真っ白なボンボンがとってもキュートな赤い帽子を被り、ある意味鮮血の名に相応しいかもしれないほど真っ赤な色をした魔女っ子衣装クリスマスヴァージョンを身に纏い、絶望的な表情をしているアッシュ自身であった。




魔法使い鮮血のアッシュ


聖夜の妖怪ユキダルマン




「大体何故俺だ!何故俺がこんな格好をして魔法使いなぞしなければならない!」
「だってそれはアッシュが正義の魔法使い鮮血の」
「それはもういい!」


ちょろちょろしているミニルークを片手で捕まえて耳元で怒鳴ってやる。両手で耳を押さえて頭をクラクラさせたルークは、すぐに復活してアッシュの手の中でジタバタと暴れだした。


「何だよ!サンタさんが捕まったんだぞ!ものすごく大変な事じゃないか!」
「俺には関係ないな」
「アッシュの外道!鬼!悪魔!人でなし!デコデコ星人デコリン!」
「てめえ……よほど握りつぶされたいらしいな……」


さほどダメージは無いがチクチク刺さるルークの罵り言葉にアッシュはこめかみをひくつかせながらゆっくりと拳に力を入れた。どうやらアッシュが本気で締め上げに掛かっているらしい事を悟ったルークは慌ててアッシュの指をバシバシと叩く。これもほとんど痛くない。


「ま、待てよ!デコリンは言いすぎたって!でもアッシュ、助けに行ってくれたっていいだろー」
「だから、何で俺が……」
「アッシュじゃなきゃ駄目なんだよ!」


ルークの瞳は真剣そのものだった。この真っ直ぐな視線はどうやら体のサイズが極端に小さくなっても変わらない威力を誇るらしい。アッシュは思わず言葉につまり、暫し悩んだ。



1、仕方がねえ、行ってやる。

2、何で俺が。やっぱり行かねえ。